昔、中国の塞(とりで)近くに一人の老人とその息子が住んでいました
ある日のこと、老人が飼っていた馬が逃げてしまい周囲の人たちも気の毒がります
ところが、しばらくするとその馬が優れた馬をたくさん連れて帰って来たのです
喜んだのも束の間、連れ帰った馬で息子が落馬し足の骨折という大怪我をしてしまいます
そのお陰で、息子は多くの仲間が命を落とした戦場への兵役を免れることができました
『人間万事塞翁が馬(にんげん(じんかん)ばんじさいおうがうま)』
”禍福は予測できない” ”良いことも悪いこともどちらに転じるか分からない”という意味
コロナ禍の中、今の職場で度々この格言を思い出しました。
昨年、還暦を前に転職したのはほとんど未経験の食品業界
それもスーパーのテナントの惣菜屋でパートタイマーとして勤務
最初は条件を絞って転職先を探すも中々決まらず、条件を全て外して探し直したらすぐに採用決定
後で知ったが私の前にほぼ採用が決まっていた人が盲腸で入院したため私を採用とのこと
ところがこのお店が一筋縄では行かなかった
店長が常勤しておらずベテランのパートさんがほとんど全て店を取り仕切っている
離婚してからこの店で初めて働き始め女手一つで4人の子供を成人させたとても勝気な女性だ
私より2年ほど前に来たというもう一人のパートさんも出産後離婚という同じような境遇で店の後輩である私に対して更に高慢に振舞った
半年先輩のパートさんは何でもハイハイと二人に従っていたがやがてノイローゼのようになって辞めていった
その後入って来た接客のベテランさんは三日目に心が折れましたとすぐにいなくなった
遅い汚いと鬼のような二人のシングルマザーから罵声を浴びる毎日だったが私もずっと黙っていた訳ではない
半年を過ぎた頃、遂に「いいかげんにしろ~!」と大声で怒鳴った
その後怒鳴ること数回
今はほとんど全てのお店の業務をこなし週4日は全商品をつくることを任されている
もし優しく丁寧に教わっていたらまだ大した仕事が出来ていないだろう
毎日見下されながらもいつか見てろという強い気持ちがバネになった
1年半もかかったが二人のパートさんとも漸く普通に会話できるようになって来た
本人にはまだ言っていないが厳しく育ててくれた二人には感謝している
コロナの影響で売上ダウンをカバーするため仕事は益々ハードになっている
もし転職が一年遅かったら今の仕事はとても出来ないだろう
コロナ禍のスーパー、スーパーの中の人間模様…
2年以上の実務経験を経て調理師の受験資格を得るのが転職の目的だったが実に学ぶことが多い職場だ
人間万事塞翁が馬…これからもいろいろなことが起こるでしょう。
※写真は動物園で撮ったホンドギツネです